こんな夢を見た:4

2005年6月14日
こんな夢を見た。
夢の中で見たドラマの話。
実は10年前に一度同じ夢を見た。
最近、その時よりもさらに鮮明に見たので書いてみる。

もちろんディテールは一部付け足してます。

 
時は秋。
焼き物が盛んな小さな町の、とある小さな旅館に、一人の女性が現れる。
人を探していると女性は言うが、実は自殺しにきたのではないか・・・
と旅館の仲居達は訝しがる。
そんな女性に一目惚れした番頭さんは、女性の気に入られようと
人探しの手伝いを買って出るが、女性はなかなか相手の事を教えてくれない。

そんなある日、番頭さんは町の土産物屋で立ち尽くす女性を見てしまう。
女性が見ていたのは名産の焼き物だったが、
自分が探しているのはこの焼き物を作った人だと言った。
その焼き物は番頭さんの姉が切り盛りする焼き場の物で、
半年前に焼き物を勉強しにこの町に現れ、
今では姉と恋仲である職人の作った物だった。
彼に会わせて欲しいと頼まれた番頭さんは、
散々迷いながらも職人に事情を話す。
職人は番頭さんとその姉にこれまでの事を全て話し、
もう会うつもりは無いと番頭さんに言う。
しかし番頭さんの姉は、ちゃんと会って話をするべきだと諭す。

紅葉が美しい公園で、女性と職人は久しぶりに会う。
再会を喜ぶ女性だが、職人は戻るつもりは無いと告げる。

女性は有名な画家の娘、その職人は父親の友人である陶芸家の息子で、
二人は幼馴染みでいつしか恋仲になっていった。
だが早くから自分の作風を掴み順調に画家として歩む女性と、
なかなか父親の影響から抜け出せずにいる職人の間には、
いつしか擦れ違いが生じ始める。
女性の才能に嫉妬し劣等感すら抱くようになった職人は、
このままでは陶芸が好きだった気持さえ無くしてしまうと思い、
一からやり直そうと全てを捨ててこの町にやってきたのだ。
以来誰にも便りを出さず、町の人達には天涯孤独の身と偽りながらも、
真正面から陶芸と向き合ってきた彼は、自分だけの作風を掴みかけていた。
それは女性といては絶対に見付からなかったと職人は言った。
番頭さんの姉が自分を支えてくれたから、自分の作風が見えてきた。
だから戻るつもりはないと、職人は真っ直ぐな瞳で言った。
女性は何も言わず黙って聞いていた。

自分が愛した瞳が目の前にある。
でもそれは自分を見ていない。

隠れて聞いていた番頭さんは、女性を思うと憤りを感じ、
ついつい職人を殴りたい衝動に駆られるのだが、
姉の幸せを思うと、どうしていいか分からなかった。

その時、強い風が吹いた。
紅い紅葉が舞い波のように二人に押し寄せた。

二人は紅い海の中にいた。
自分だけじゃない。
彼もそう感じている。
女性はそう思った。
 
 
 
その後、そのまま女性は家に帰っていった。
やるせない思いを抱え毎日を過ごす番頭さんだが、
たまたま見た週刊誌で彼女が新作で大きな賞を取ったと知った。
それは紅い紅葉が渦を巻いたように舞い散る絵だった。
あの日の紅葉だと彼は思い、そしてそれを絵にしたことを嬉しく思い、
彼女は過去を乗り越えたと思った。

ある日、職人が新しい器を作ったと姉から知らされ、
番頭さんはその器を見に行った。それは紅い器だった。
釉(うわぐすり)の加減で紅いグラデーションを描くその器は、
確かにあの日の波のような紅い紅葉だった。
 
 
この器はきっと世に出るだろう。
そしてこの赤は芸術家達を惹きつけるのだ。
彼女の絵が芸術家達を惹きつけたように。
 
二人は同じ物を見て同じ事を感じている。
こうやって芸術という同じ道を歩いているのに、
それなのに二人がそれを分かち合うことは無いのだ。
 
 
番頭さんはそう思った。
 
 

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索